No.128

プラットホーム

★★★★ 
監督:賈樟柯 出演:王宏偉 趙濤

 この作品は涙がでるような感動のシーンはない。劇的な展開もないし、主演の俳優たちはほとんど演技の経験も浅い、セミプロのような人ばかり。とびっきりの美男美女もいない。しかしだからこそ、リアリティがあり、映像に説得力が出てくるのかも。
 舞台となるのは中国の80年代、山西省の汾陽(フェンヤン)という古い城壁が 残る小さな街。物語は文化劇団の革命劇(!)の舞台から始まる。この劇団の4 人の男女の日常が描かれるが、前述のように、ドラマチックな場面がないかわりに、細かい描写 が巧みなのに感心!とくに際だつのは時代時代を彩っ ていたポップスの数々と、彼らのファッション。最初のころ、何気なく彼らが聞いて いるのはテレサ・テン。が、やがてロックに変わっていく。 ラッパズボ ン(!)を得意げにはいていたかと思えば、ロックに感化されて長髪になったり。は じめの頃、映画館にはマルクスとエンゲルスが、彼らの部屋には周恩来の写真が飾っ てあるけど、それがラスト近くになると、風景画のカレンダーに変わっていたり する。劇団の稽古場の毛沢東の肖像画の前で、フラメンコを踊るシーンも象徴的で面 白いシーン。時の進行を確実に、しかしさりげなく表す賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の力量 は相当なもの。単調な日常の積み重ねのようでいて、10年たてば社会はもちろん、ずいぶん個人の状況はかわるものだと客観的に気づかされるのだ。 印象的だったのが、城壁の上での明亮と瑞娟の会話。ちょうど画面左半分は城壁し か見えないが、2人はこの死角になったところで話をしている。時々交互に視界の中に現れてはまた消えてしまうので、見る側としては壁の向こう側の2人がどういう感じで話しているのか、とても知りたく(見たく?)なるというわけ。
 また、街と街を走る長距離バスで城壁をくぐったり、街を後にする描写も状況をさりげなく語って効果 的。バスのフロントガラスの裏側から都市間の地名表示ごしに街の風景を見るような仕掛けになっている。ワンピースやスーツ姿で肉体労働、広州帰りの張軍の「ニセ西洋人」ファッションなど、中国通 のみなさんならきっと「ああ、ある、ある」と感じてもらえそうなシーンも150分間の中にちりばめられている。ぜひおもしろいシーンをいろいろ探してみて!でも中国にとくに興味のない人にとっては、★はもう少し少なくなるかもしれない。(2001.10.27)

 

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